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2012年11月27日 (火)

OSJ八ヶ岳スーパートレイル100マイルレース【大会編】

(※スマートホンで見る場合は最下のPC表示ボタンを押すと見やすいです)

大会から3週間ほどたってしまいましたが、ようやく書きあげました。今回はレースでは1枚も写真を撮らなかったので、全て撮ってもらった写真です。

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《レースデータ》
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「OSJ八ヶ岳スーパートレイル100マイルレース」

<場所>長野県、山梨県の八ヶ岳山麓エリア
<開催日>2012年11月3日(土)・4日(日)
<距離>100マイル(160km) [蓼科~蓼科]
<出走>出走510名、完走138名(完走率27%)
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<制限時間 >
◎100マイルコース
第1関門[清里](54km)           スタート後12時間 17:00
第2関門[松原湖](96km)       スタート後18時間 23:00
第3関門[女神湖](145km)       スタート後27時間 08:00(4日)
最終フィニッシュ(162km)        スタート後30時間 11:00(4日)
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<全体MAP>

Map_all_5




<MAP 1/4>

Map01d

■[スタート前] プール平
朝3時半に宿泊した「ペンション蓼科」さんの車でスタートラインまで送って行ってもらえる予定であったが、目覚めたのが3時を過ぎた時。目ざましを無意識のうちに消して二度寝してしまい完全に寝坊してしまった。ウェアは着込んで、テーピングも済ませて寝ていたので、慌てて荷物をバックに詰めてロビーに降りた。出だしからいきなり失敗の予感。。。ペンションから会場のプール平には直ぐに着いた。プール平の気温は-5度。待っていると体が冷えてくるが、待機中に スポーツバルム レッドを塗っていたのであまり寒くならずに済んだ。待っている間は屋外用ストーブ横にいたのでダウンは着なかった。

今回初の100マイルということで、トレラン仲間であり、100マイラーの先輩からあるアドバイスをもらっていた。

「100kmまではウォーミングアップ


国内外数々の100マイルレースで上位入賞しているタフなtomoさんでさえ、毎回120kmになると精神的にも肉体的にも本当に辛くて走りたくなくなる状態になるという。この言葉を胸に、先ずは100km地点に自分をノーダメージで運ぶことだけを考えていた。そして、これまで最高の連続走行距離である110kmから先の自分はどうなるのだろうか?自分にも120kmに棲む魔物は現れるのだろうか?160kmという途方もない距離を実感できず、他人事のような感覚のまま、朝5時ジャストにプール平をスタートした。

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(朝5時頃 スタート地点のプール平)

■[スタート]  プール平~蓼科湖湖畔
真っ暗な夜明け前のロードにシャリンシャリンとたくさんの熊鈴の音が響きわたっている。中盤位の位置をキープ。どうせ上がるんだから、こんなに下らせないで欲しいと思うくらいとにかくロードをひたすら下る。蓼科湖を過ぎてしばらく行くとちょうど日の出の時間になった。朝のひんやりと澄んだ空気を吸いながら八ヶ岳の麓を走るのはなかなか気持ちが良い体験だ。着込んでいることもあり、寒さはそんなに感じなかった。


■[第1エイド] 岳麓公園 (約8km)~
最初のエイドでいきなりクリームパンとモンスターエナジーが出た。寝坊したので朝食が満足に食べられなかったから嬉しい。このエイドに到着した時にライトが要らなくなる明るさとなり、ライトをしまって再びロードをひたすら走る。左手に南北にどっしりと連なる八ヶ岳の稜線が太陽の光でクッキリと照らされてとても綺麗。八ヶ岳は過去に何度か登っているが、こうして少し離れた麓から見ることはなかったので新鮮だった。


■[第2エイド] 八ヶ岳自然文化園 (約18km)~
ロードが続くだけに第2エイドにも直ぐに到着。エイドでトマトが出るがパックの中の補給食を減らして軽くしたかったのでパワーバーを食べる。エイドに応援のハリマネさんとかほるさんがいた。いつもは速い旦那様達のサポートなので、こうして出会う事は殆どないのだが、今回は100マイルだけにみんなスローペースで入っているようだった。この後、信玄棒道トレイルに入る。名前の通り棒のように真っ直ぐなトレイルでアップダウンが殆どなく、とても走りやすいトレイルだ。紅葉の木々を太陽が照らしてとても綺麗な秋のトレイルを堪能した。

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(八ヶ岳自然文化園前にて) photo by harimane-san

■[第3エイド] 八ヶ岳登山歴史館 (約32km)~
ここで信越五岳でペーサーをしてくれたモッシーが応援に来てくれた。9月の信越五岳を思い出す。飛ばしているつもりは無かったが、自分はモッシー予想時間(下図)より早く着いてしまったようだった。太陽が上がって暑くなってきたので、ミッドレイヤーのフリース(キャプ4)を脱いでジャケットとシャツのみにした。ここのエイドは水だけだった。今回の大会ではエイドでは何が出るか詳しい情報が無いので、ありそうと思ったところに無かったり、無いと思っていたところが豪華だったり、行ってみないとわからないお楽しみ状態。

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(モッシー予想タイム)


■[第3エイド](32km)~観音平 (約38km)
第3エイドから観音平の8kmは苦手な登りのロードだ。ここで走ると脚が終わりそうだったので殆ど歩き通した。

<MAP 2/4>

Map02d

◆観音平(38km)〜
観音平から第1関門までは合宿で既に走っていたのでコースはだいたいわかっていた。合宿の時はあっという間に終わってしまい、この区間はボーナスみたいな区間だと思っていた。しかし、40km程走ったあとに入るトレイルはなかなか厳しくて、斜面を何度も登っては降りて、登っては降りての繰り返しがキツく、立ち止まって何人も先に行ってもらった場面もあった。合宿の時はこんななに登ったかな?こんなに厳しかったかな?コースが違うのではないか?と思うくらいだった。長い登りになる前にジェルを飲み、登っている最中に柿の種を食べ、の繰り返しをおこなった。


■[第4エイド](45km)~
アップダウンの連続が終わりようやく下り基調になり、天の河原の第4エイドに到着。チームROD5名によるのサプライズ応援があり、手作りの応援ボードを用意してもらっていてとてもテンションが上がる!さらにsasashinさんくりすけさんからも応援を貰い、水だけのエイドだったが応援がとても力になった。ペース的に30km,40kmのトレイルレース的なペースになっていて、みんなと会うまではこのレースが100マイルレースであるという事を忘れていたので、ここで改めて100マイルレースである事を再認識してゆっくりペースに戻した。

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(手作りボード)

◆天の河原~美しの森~第一関門(55km地点)
ここも合宿で通過していたのでだいたい知っているつもりだったが、やはり繰り返しのアップダウンがあり、易々と楽なコースでは無かった。天気は合宿の時も良かったが、今回はさらにその上を行く天気の良さでサングラスを持ってきて正解だった。紅葉の美しいトレイルが終わり、林道を30分ほど下ると全コースの1/3にあたる第一関門に到着。


■[第1関門]  八ヶ岳自然ふれあいセンター (54km) <制限時間:17時>
昼の12時50分頃に到着。予定より40分程早かった。関門を通過して、先ずエイドのテーブルにズラリと並ぶグレープフルーツとバナナに圧倒される。とにかく食べられるのは今しかない!と思ったのでガンガン食べまくる。そして夢中で食べていると、エイドの向こうからチームすぽるちばのshinさんから声がかかり、そちらの私設エイドでもポテトチップスや温かいスープを戴く。自分が到着したときに丁度(すぽるちば)のりさん、石井さんが出発する時だった。そして、エイドをうろうろしていたら、jiroさんが体調が悪そうに横になっていた。この展開は2011年の信越五岳を思い出す。しかし、彼ならその時と同じように絶対復活して来るだろうと思っていた。お腹を満たして第1関門を出発。結局20分くらい長居をしてしまった。ロードをひたすら下って清里の駅まで下りる。清里に来たのは初めて。観光気分で清里の街を通過して、途中の自販機でコーラを購入。飯盛山へ入る。


◆飯盛山(60km)
夕方近くなので、下山してくる多くのハイカーとすれ違いたくさんの応援をいただく。当初は子供でも登れる緩い山と思っていたが、やはり60km走ってくると緩い山でもタフな山に大変身。息を荒くしながら登る。30分程ひたすら登ると稜線に出る。頂上らしきものが見え、あそこまで行くのかな?行きたくないな、途中からショートカットで稜線の反対側へ行く道に行かないかな?等と思っていたが、行きたくない頂上付近に向かって歩く選手が遠くに小さく見えて、やはりそこまで行かせることがわかって落胆。そして、しばらくすると背後から軽快なストックを突く音が聞こえてきた。振りかえるとjiroさんだった。やはり復活してきた。普段はずっと先を行く選手なのでこういう展開はめったにない。

「あれ?ストック無いんですか?」

実はスタート時にストックをドロップバッグに預けてしまっていた。背負っているパックの重さが水と補給食、防寒着であり得ない重量となり、

「ダウンジャケットをとるか?ストックをとるか?」

悩んだ末、前半はロードが多く、使いどころは飯盛山だけだと思ったのでストックを
ドロップバッグに入れてしまったのだが、もし仮にストックをもっていたら、この飯盛山でもっと楽だったはず。今思えばもう少し見直せばあと200gくらいの軽量化は何とかなったような気もする。飯盛山の頂上は通らないものの、頂上からほんの数百メートル手前で野辺山へ向かう下り道へ折り返す。頂上付近から見える夕日に映える八ヶ岳はとても美しかった。


■[第5エイド]平沢峠P(64km)~
飯盛山から野辺山駅へ降りるときに再びjiroさんと並走。同時に第5エイドに到着。ここは水だけ足してすぐに先へ進んだ。


◆野辺山ウルトラコース
野辺山駅にいくと、先回りしていたasashinさん、くりすけさん、かほるさんから応援を受ける。かほるさんからさり気なく自分の顔色を冷静かつ客観的に伝えてもらえるのが非常に助かった。さすが、旦那さんのサポート歴が長くツボを心得ている。

JR最高地点を通過して野辺山ウルトラのコースになる。前半は登り基調。トレラン仲間達はこんな登り基調が続くコースでサブ10(ウルトラマラソン9時間台完走。マラソンのサブ3的な意味)を記録しているが、よくみんなこのコースをサブ10ペースで走れるな、等と感心しながら初の野辺山コースを堪能。途中、臨時エイドが出現。この先のエイドは無人になり、水だけ置いてあるとアナウンス。ならば、ここで補給すれば問題無い。

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(JR最高地点:野辺山駅前にて) photo by kahoru-san


◆南八ヶ岳林道
林道も永遠と登り基調。jiroさんと話しながら歩きと走りを混ぜつつ進む。こういう単調なコースで話し相手がいることはとても幸運だ。徐々に陽が落ちて来て冷え込みが厳しくなってきたので、パックにしまっていたフリースを着て、グローブの甲からカバーを出してミトン状態にした。


■[第6エイド](80km)~
無人のエイドでは何人か立ち止まって補給していたが、ここはスル―。しばらくして登り基調の林道が終わり、ちょうど暗くなったのでライトを点灯。松原湖に向けて、ずっと下り基調の林道なので調子良く走った。途中、koichiさんに追いつく。彼も同じく普段では先を走っているはずの選手なので、本来ならお目にかかれないはずなのだが・・・今回は上位選手も苦戦する大変な事が起こっているレースなのではないか?と、ここで気づきはじめた。しかし、先は長い。初の100マイルレース。この先スローダウンするのは自分かもしれない。


<MAP 3/4>

Map03d

■[第2関門]松原湖  (96km)~  <制限時間:23時>
松原湖に向けてひたすらロードを下る。松原湖周辺の街を抜け、第二関門に到着(19:21)。予想タイムは20時50分だったので1時間30分ほど早く到着した。関門にはモッシーが再び応援で待機してくれていた。信越五岳で60km地点でペーサーとして待っていてくれた時を思い出した。モッシーとは何を話したか忘れてしまったが、誰かと話ができるというのは気分転換になり、再び走り出すことを新鮮な気持ちにさせてくれる。焚火で暖をとりながらエイドで地元の人が用意していた温かい味噌汁を2杯いただいた。ここでも先回り応援している、かほるさんがいて、顔色の状態を伝えてくれたが、むしろ先の野辺山の時より顔色は良いとのこと。

関門には焚火があり、選手たちがパイプいすに座って暖をとっていた。この焚火の暖のそばにいると根っこが生えそうな居心地の良さだった。焚火を囲む選手の中に1人、軽装で寒さに震えていて、ドクターから毛布を被されて休憩所に向かった選手がいたが、あの軽装でこの寒さで残り15km先のデポに到着は厳しいだろう。おそらく早い段階でデポに到着して防寒着をピックアップできると思っていたのだろう。山はそんなに甘くない。途中会ったkoichiさんやチームすぽるちばの面々、Jiroさんらが続々と第二関門に到着。ムードメーカーが集結し関門は一気に賑やかになった。お腹を満たし、モッシーと完走の約束を交わし(RODメンバーの応援はここで最後となる)体が冷える前に自分は一足先に出発した。

第2関門を出て100km地点を通過。
次のデポまでロードが続く。時々車が通り過ぎたが、レースを知らない人はライトをつけた人がこんな真夜中に山の中の道を走っている光景は驚くに違い無い。真っ暗なロードは単調なので用意していたイヤホンで音楽を聴きながら走った。空には雲が無く、星がたくさん輝き、月明かりが八ヶ岳周辺の山々の稜線を照らし、その下に街の灯りがあり、幻想的な景色だった。その風景と音楽がバッチリとはまってとても楽しめた。


■[第7エイド]八千穂レイク(110km)~ <デポ>
ひたすら下り切ると110km地点の八千穂レイクのデポに到着。極寒の中、ボランティア参加のDMJのISOさんがたった一人でドロップバッグの受け渡しに悪戦苦闘中。ここのエイドは何故か他に比べて人が少ない。人手が足りなくてエイドにも余裕が無いという感じだったが、あたたかい麦茶を用意してくれていたのでとても助かった。

荷物を受け取り、暖房の効いていない室内で着がえと補給食、装備交換をおこなった。長持ちする高価なリチウム単3電池を使っていたが、ローバッテリーランプが点滅していたので電池を交換。ドロップバッグから待望のストックを取り出す。追加したウェアはロングパンツをタイツの上から重ねてはいたのみ。そして、ソックスを交換した。相変わらずダウンジャケットはパック奥底の重石だった。こいつの活躍場面はいつだろうか?

デポ袋にいれていた夕食のおにぎりを楽しみにしていたのだが、かぶりつくと凍っていた。凍ったおにぎりを外の焚火で溶かして焼きおにぎりにできるか?と思いきや、火に突っ込んでもなかなか焼きが入らない。とりあえず表面が温かくなったので、再びかぶりつくと中央がシャリシャリに凍っていた。しかし時間も無いので半分凍ったおにぎりを食べた。同じくデポに預けていたサーモスの温かいコーヒーは、冷めないように保温袋に入れ、さらに保温シートでグルグル巻きにしていたのに、温い状態だった。しかし、それを飲み干した。ドロップバッグはまさか地べたに置かないよね?と思っていたが、事前に確認をすべきだった。訊かなかった自分が悪かっただけだ。

エイドにあった熱々の麦茶で身体を温めて、それサーモスに継ぎ足して今回のハイライトとなる大河原峠へのアタックへ出発。距離は110kmを過ぎたあたり。ここからまだ体験した事が無い未知の領域となる。さすがに疲れていたが、脚にダメージは無く体調も問題無い。身体への冷えはどこにも感じない。まだまだ行ける感触があった。


■[第8エイド](125km)~
ロードをひたすら下って。大河原峠に向かう林道入口にエイドがあり、再び温かい飲み物をいただく。事前には水だけと言われていたエイドだが、10~15km毎にある各エイドで温かい飲み物をいただけているので助かっていた。林道に入って登りになるのかと思いきや、さらに下る。途中、デポで先に出発したチームすぽるちば石井さん、のりさん、稲葉さんらが立ち止まってマップを見ている。みんな下りが長いので本当にこのコースで合っているか?不安になって地図を確認していたらしい。iPhoneのGPSを見るとコース上にいる事を確認。少し走ったらコース目印があり、一安心。ここからチームすぽるちばの3名と行動を共にしながら進んだ。林道を下りに下って、ようやく傾斜が逆転。今回のレースのハイライト、大河原峠に向けてストックを突いて登りはじめた。

登りなので殆ど歩きではあるが、少しでも緩い傾斜になると石井さん、のりさんらは走りだす。さすがいつも上位に入る選手達の走りだ。この12km以上もある大河原峠の登りは本当に長かった。2009年のCCCで味わったモンテ峠での苦しさ以上に長く厳しい登りだった(ちなみにモンテ峠は7km)。とにかく3名に食いついて行った。途中、林道を救急車が静かに登っていき緊張感が走る。どうやら停滞している選手を収容したようだ。動き続けていれば寒さはそう厳しくないが、何かアクシデントや体調不良で停滞すると寒さは一気に身体を蝕むように侵入してくる状況にいた。そして、あと7kmくらいで大河原峠に到着というところで急激に睡魔に襲われてペースダウンしてしまった。今回最も前に進むのが困難な状態となり、ここで3人から徐々に遅れはじめた。距離的にはちょうど120kmくらいの地点だ。

「これがtomoさんの言っていた、120kmに棲む魔物なのか?」
 
身体が眠くてパフォーマンスが低下した状態で、さらに高度が上がったことで急激に冷えてきて手が冷たくなったしまった。もうすぐエイドだからと我慢していたが、手の冷たさに耐えられなくり、立ち止まってパックをあけて思わずフリースのグローブを追加。開けたついでにメイタンCCC200を投入。そのおかげでしばらく歩いていたら睡魔が徐々に収まったが、手の冷たさはなかなか回復しなかった。更にジャケットのフードを被り首への冷気をシャットアウト。この日最高の防寒装備体制になったが、ダウンジャケットはまだパックの底にある。しばらくして林道の傾斜が緩くなり、難所の終わりを予感させた。そして、大河原峠の「スーパーすぽるちばエイド」の明かりが見えた時は本当にオアシスに見えた。石井さん、のりさんら、すぽるちばのメンバーとほぼ同時に到着したのでエイドは気温-10度であることを忘れる程の大盛り上がりとなり、大河原峠の辛かった疲れは一気に吹き飛んだ。(以下、その到着時の映像)

(映像解説)
レース最高地点であり、最低気温地点の大河原峠に深夜4時頃に到着した生々しい映像。自分は12kmの大河原峠を登った直後で余裕が無かったため全く言葉無し。ちなみに、映像内でのりさんやshinさんらが素晴らしいコメントを連発しているが、彼らのOSJ愛とカメラサービス溢れるものだ(笑)
<撮影:shinさん>

■[第9エイド]大河原峠(135km)~
大河原峠のスーパーすぽるちばエイドでは合宿でいっしょになった塾長やみかんさん、そしていつもお世話になっているこあしす山民会の方々からエイド到着の歓迎を受け、沢山の食べ物と温かいスープ、コーヒーをいただいた。普段バリバリにトレイルレースを走っている凄い人達が作るエイドは「流石わかっている!」というツボを抑えた品々が並ぶ今までのレースで最高のエイドだった。2週間前に参加したOSJ直前合宿では鏑木さんから秘策の伝授は無かったが、この大河原峠のエイドで頑張る人達に会いに行くぞ!というモチベーションが出来た出会いそのものが秘策だったと言っていい。エイドのみんなとしばし話をしていると、まだ80人くらいしか通過していない等レース情報を得る。自分は関門時間もそう余裕が無い位置にいるはずなのに、約500人出走していならがらまだ100人も到着していないというのは異常事態だ。残りあと約30km。体力的にもまったく問題無く、ここを下って12kmも進めば女神湖だ。

「120kmに棲む魔物に勝ったのか…?」

油断したわけではないが、ほぼ勝ったと思った。しかも予想ゴールタイムの28時間台を大幅に越えられるかもしれない。もう少しエイドに長く居たい気持ちもあったが、身体が冷えないよう胃袋も満たして意気揚々と出発したのだが…数百メートルのロードを下っていると足首に異変感じ始めた。

「嘘だろ?」

突然両足首が痛くて走れなくなってしまったのだ。今までに発症した事が無い痛みだった。脚が攣ることもなく、足を捻ったわけでもなく、足裏痛や膝の痛みが出ないように丁寧な足置きを心がけていたし、なぜそうなったのか?いろいろ考えるも原因がわからなかった。気力も体力も充分だったが、110kmから先の知らなかった自分の身体的限界はどうやらここまでだったようだ。

「やはり、120kmに棲む魔物はいた」

ということだ。
100マイルはそんなに甘く無かった。これが100マイルの洗礼か。足元を掬われたとはまさにこの事だ。

しかし、走れないが歩ける脚はまだ残っている。
持っているロキソニンを投入して歩きながら様子を見る。30分もすれば痛みは収まるはずだ・・・と思って進んだが、痛みが収まる気配は無かった。しばらくすると林道からトレイルに入り、そこを抜けると見晴らしの良い女神湖手前のスキー場の斜面を下るコースに出る。ここはふかふかトレイルで、本来ならガンガン快走できるはずなのだが、一歩一歩着地する毎に思わずウッと呻き声が漏れた。しかし、ここでリタイヤしようという気は全く無かった。意地でも160kmという距離に負けたくなかった。

スキー場斜面を下り切ると女神湖湖畔へ到達。ちょうど日の出が女神湖を照らし出し、朝の光を浴びながら澄んだ空気の女神湖の周回コースをトボトボ歩いているとハリマネさんがカメラを構えて立っていた。なんと、自分はハリ天さんより先行しているらしい。どこで抜いたのだろう?もう1名、普段は先行しているはずの選手の苦戦状態を間接的に知る。やはり今回の大会はとんでもない事があちこちで起こっているのだ。

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(女神湖湖畔にて) photo by harimane-san

<MAP 4/4>

Map04d

■[第3関門]女神湖  (145km)~  <制限時間:8時>
朝5時59分、女神湖の第3関門に到着。(予想タイム6時20分)
約束通り合宿でお世話になった「ペンションおやまのえんどう」の女将さんに到着の挨拶。顔を憶えていてくれたようで、約束の到達を果たせてホッとした。このエイドはテントの周囲をビニールで囲っていて、中はストーブで暖かく、椅子に座っていれば地元の綺麗なお姉さん達がおにぎりやトン汁も持ってきてくれるというまさに女神湖と言っていいVIP待遇を受ける。先のすぽるちばエイドと同じく、このエイドも今まで出たレースの中で最高のエイドと言って良い。そして、同時刻にエイドにいたのりさん、石井さんに足が痛くて走れない事を話したら石井さんが手持ちのロキソニンを全部渡してくれて、先に出発していった。自分も後を追うようにテントを出た。早くこのレースをやっつけて終わりたい。そんな気持ちでゴールに向けて第3関門を出発した。

ゴールまで残り15km。

しかし、薬を飲んでも足首の痛みは治まる気配は無く、ゴールまで完全に歩き通す覚悟を決めた。しかし走れば15kmはそう遠くない距離だが、歩きとなると果てし無く遠くに感じる。しかもこの後はトレイルになる。
白樺湖湖畔をストックを突いて歩いていると後方からjiroさんが来た。すっかり先行していると思ったら、大河原峠のテント内で休んでいたらしい。そのままjiroさんは先に走って行った。

■[第10エイド]白樺湖(150km)~八子ヶ峰
エイドにモンスターエナジーのフラッグ見えた。とてもじゃないが冷たい飲み物を飲みたい気温ではなかったが、ここのエイドではモンスターエナジーをホットにしていた。これが案外イケる!飲んでシャキッとしたところで最後のトレイルとなる八子ヶ峰へアタック。時間は朝7時半。制限時間の午前11時まで残り3時間半。距離12kmのトレイルを歩き通すとなると全く余裕が無い残り時間だった。

「歩くだけでは間に合わないかもしれない」

最後にまた試練が用意されていた。そして、制限時間に追われる展開となった。

トレイルで所々に段差があり、平地と違って余計な力が足首にかかるので厳しかったが、ストックを上手くつかって負荷がかからないように慎重かつ速度を落とさず進んだ。自作ストックが大活躍だった。元々UTMB用に製作をしていたが、このストックで他の人は既に100マイルを完走はしていたが、製作者である自分が100マイル未体験というのはマズいと以前から思っていた。それもあり、なんとしてもゴールしたかった。

「このストックとゴールするぞ!」

ゴールをイメージしてひたすらパワーハイクで進む。
八子ヶ峰の開けた稜線にひろがる笹尾根から円錐状の蓼科山を見渡せる景色はとても美しく、痛み無く走れたらどんなに気持ちがよかったことだろう。なぜスタートとゴールがプール平なのか?きっとこの景色を最後にもってきたかったのだろう。いつかファンランでこのトレイルを走りたい。そんな景色と極上トレイルだった。

途中途中に立っているスタッフに、

「歩きながらでもゴールできるか?」

会う度に訊いてしまった。

「大丈夫、間に合う」

と言ってくれる安心感を得たかったのだ。しかし、自分は明るくなって比較的暖かい今の時間帯にこの場を通過しているが、このスタッフのみなさんはこの寒さの中、まだ100人も通過していないのに昨晩からポツリ、ポツリと来る選手達をずっと見守っていたのだ。本当に頭が下がる思いだった。


■[ゴール]プール平(162km) <制限時間:11時>
数キロにわたる八子ヶ峰の稜線パートが終わり、ようやく下りパートに来た。眼下に国道と街が見える。距離は3kmはあるだろうか。これを下りきればゴールだ。走れれば10分かかるかどうかの下りを一歩一歩慎重に下り、トレイルが終わると別荘が建ち並ぶロードに出た。地元の方々の応援をうけながらストックを突いて、ゆっくり進む。しばらくして、車の喧騒が聞こえて来て国道に出ると既にゴールした人達とすれ違う。誰か知らない人同士だが、お互いに健闘をたたえ合う。間も無くゴールゲートの近さを予感させた。時計を見ると28時間50分くらい。無理して走れば当初の予想の28時間台に手が届くかもしれなかったが、もう記録はどうでも良かった。

ゴールゲートが見えた。エイドで度々サポートを受けたすぽるちばの応援チームやこあしすの方々、そしてボランティアから戻って来たISOさんら沢山の方々に迎えられ、29時間1分。ゴールゲートをくぐった。

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(撮影:DMJ ISOさん)


◆初の100マイルを走り終えて
100マイルという長いレースでは何かが起こる事は必至だが、何かが起こらないように気をつけ、あらゆる障害をその都度排除しながら淡々と進んでいたつもりだったが、後半に足首に100マイルの洗礼をガツンと1発喰らってしまった。100マイルはそう甘くなかった。しかし、そんな状況の中で制限時間のハードルが一段高いこの100マイルレースで、負傷しながらも時間内完走で締めくくれた達成感は今までに無くとても大きなものだった。

当日の寒さについては風も無く、雪も無く、レースを走っていない人が思うほど極度に過酷な状況では無かった。足が痛くなるまではとても楽しんで走っていた。ただ、やはり100kmを越える距離だし、身体は疲弊している状態で、何らかの体調不良やアクシデントでスローダウンしたら夏の大会と違って道端で長時間倒れこんでは危険な寒さであったので、少しでも不調を感じたらリタイアを余儀無くされた事は確かだった。たくさん食事を摂って、しっかりとした装備で体温をキープして行動し続けられたのが完走出来た理由だと思う。

また、今回は幸いにも直前合宿でお世話になった皆さんやランニングチームの仲間達が先々のエイドで待っていてくれたので、そこまで行こうというモチベーションを継続することが出来たことは前半の〜中盤で前に進もうとする大きな力となった。1人では完走できなかったわけで、ただ1人だけ完走の喜びと達成感を味わって、それで終わって良いわけがない。これは何らかの形でお返していきたい。

Img_7728




◆ゴール後談
ゴール後、午前11時にプール平の温泉がオープンし、着替えていてソックスを脱いだ時に足首の痛みの原因が判明した。足首が浮腫みソックスのゴムが食い込んでいて、その箇所が紫色になっていて、痛さの震源地となっていたのだ。それを見た時愕然とした。足首を捻ったわけでもなく、両足首が同時に痛くなった不可解な原因がようやくわかった。

「ソックス1つで、こんなにダメージを受けるのか…」

長時間きつい拘束具でギリギリと筋肉を痛めつけていたようなものだった。デポでのソックス交換したのだが、浮腫んでいる足の事を考えて少し余裕のあるソックスに交換したのだが、それが裏目に出てしまった。交換したソックスはまだ比較的新しいソックスでゴムの部分がしっかりしすぎていたのだ。また、先に履いていたソックスが小さめのソックスでそれを余裕のあるソックスに換えた事で抑えられていた浮腫みがさらに膨張してしまったのだ。寒さもあって汗で不快だったわけでもなく、特に交換しなくても良かっただけに、その判断は悔やまれたが、結局この激しい足のむくみ方は110km以上走るまでは知る事が出来なかった初めての経験だった。この経験は次回に活かし、今度は快走してゴールゲートをくぐりたい。

Img_7874

(左:レース後1週間経過でもこの状態 /右:レース後2週間)

以上

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