« 2012年2月 | トップページ | 2012年4月 »

2012年3月

2012年3月20日 (火)

「MYOGの世界」

MYOG


先日おこなわれた、Hiker's Depot主催の『Hiker's Party2012 Spring 「MYOGの世界」』 へ登壇者の一人として、また参観者の一人として参加してきました。

大会のレポートはJackieBoyさんのblogに詳細かつ的確な視点のレポートがあがっているので、そちらを是非みてください。自分は少し違った視点でレポートをします。


「ULとは何だったのか?」


先ず、MYOGを語る前にULについて触れたい。

UL(Ultra Light Hiking)とは超ざっくりと話しをすると、水と食料と着用している服を除き、リュックサックを含む山道具一式の重量が約4kg以下(ベースウェイト)という目安をもって実践するハイキングである。 数年前までは大手メーカーが重い製品ばかりなので、ULハイキングを実践するには高い送料を払いながらも海外のULガレージメーカーやショップから軽い道具を手に入れる必要があった。また、それでも約4kg以下にまとめるのは大変なので道具に手を入れたり、そもそも自分で軽い素材で道具を作ってしまおうというアクションが起こり、それがMYOG(Make Your Own Gear)と呼ばれる一つのスタイルとなり、タフな山漢(おとこ)達が空き缶からアルコールストーブを作ったり、ミシンを使うようになった。ULとMYOGはとても密接な関係UL≒MYOGと言ってもよかった。

しかし、ULハイカーが軽量化の試行錯誤や切磋琢磨する様子をSNSやblogで発表する様に追従するように、大手メーカーの開発力や新興ガレージメーカーの登場、そしてULギアを取り揃えるショップの努力で、超軽量でハイクオリティなギアやウェアが容易に手に入るようになり、ベースウェイトを達成する事はもはや特別な事では無い時代になった。

まさにULハイカーが理想とする環境がようやく来たと喜ぶべきではあるのだが…ではそんな時代に、


「なぜMYOGするのか?」


改めてアイデンティティを問われているのが、今のMYOGer達である。

MYOG

「もはや軽いだけでは済まされなくなったユーザー視点」


これまでは自作をすれば、ほぼマスプロダクツより軽いものを作ることができた。そして、軽いからクオリティはそこそこで良いだろいうという免罪符的な逃げ道があったのだが、マスプロダクツと変わらない重さなら、高い機材や素材をわざわざ購入して、貴重な時間も使い、なぜ低クオリティのものを作るのか?MYOGをする際にこの壁にぶつかるはずだ。見る側もそうだし、作った自分が客観視してもそうだ。

そういった岐路に立たされている中で、各発表者のそれぞれのアイテムは、なぜマスプロダクツに軽いものがあるのに作るのか?それぞれの今の時代との葛藤が見え隠れしていてとても面白く、今回のMYOGパーティーはそんな今だからこそ意味がある企画であったと思う。もし2年前にあったら、軽い!素晴らしい!だけで終わっていたのだから。

例えば、今回登壇したコッシーさんのコッシェルターやパックは敢えて機能をそぎ落とし「ミニマリスト」というコンセプトを打ち出していた。ベイクドポテト君のダウンのリストウォーマーを二つ連結してネックウォーマーにする機能を持たせたり、2人用のbibyシェルターというこれまでにない斬新なアイデアのアイテムを作り出す方向を打ち出し。Ogawandさんはガレージメーカーやメジャーなメーカーが忘れていたショルダーハーネスに着目した目から鱗の背負いやすいリュックサックを作り、高機動さんのリュックサックやsanpoさんのCFストーブは新興のガレージメーカーの追従を許さないハイクオリティさをさらに突き詰める方向へ進んでいる。

MYOG


「それぞれのアイデンティティを明確に打ち出していかないといけない時代になった。」


道具というものは必ずアイデンティティはあるわけだが、「軽さ」という圧倒的なアドバンテージが無くなった事でより明確に「それ」を求められるようになった。人に売るかどうかは別として、アイデンティティがあるものは言わなくても滲み出てくるものだし、そこに共感できた人はいくらそのアイテムの値段が高くても欲しいと思える。これはMYOGに限らず物が溢れている今の時代で売れているものはみんなそうだと思う。


「MYOGをすることで得られるもの」


上記ではアイデンティティなど小難しくハードルの高い話をしてしまったが、下手でもいいしマスプロダクツより重くてもいい。先ずは自分が作りたいと思う欲求に従うままに思いついたアイデアでまず作ってみて欲しいと思う。自分で道具を作ることで、縫い方一つにどういった意味があるのか?この値段でそれが買える企業努力というものが痛いほどわかってくるはずで、道具を見る目は大きく変わるだろう。その上で自分で作るのか?既製品を買うのか?目利きの力が生まれてくる。自作に慣れてきたら改めて、マスプロダクツを驚愕するアイテムを生み出せば良いと思う。最初から高い所は狙わなくて良いと思う。


「道具は自然と自分の間をつなぐもの」


そして、自分で作った道具は自分が知り尽くしているものだから、これを自然と自分との間に置くことで、より自然への密接度が高まるはずだ。道具は自然と人との間に入る緩衝剤みたいなものだと自分は思っている。道具がわかればどこまで道具を小さく、軽くできるのか?限界点がわかるようになってくる。自然と自分との折り合い点をより理解できる近道になるはずだ。単に既製品との比較ではなく、


「本来のMYOGの王道がそこにある」


と思う。


MYOG
(熱心に見入る参加者達)


今回のような道具の発表会となると、アイデアや斬新さに目が行きがちだが、特に目立つ工夫は無いが自作の道具で行った山行がどう素晴らしかったか?これは伝えるのは難しい。なので、そういった視点がある事を忘れずに我々は今後もMYOGと向き合っていくべきだと思う。

先にも書いたが、先ずは自分で思い描くものを欲求に従うままに、是非作ってみてほしい。出来上がったものがどうであれ、これからの山を続けていくのなら得られるものはとても大きいはずだ。また、これといって明確に作りたいアイデアはないが、自作の道具を作ってみたいという人は、海外通販となるがULハイカーの祖ともいえるRay Jardineのサイトから自作のキルトやタープのキットを買ってみるのも良いだろう。今回の登壇したMYOGerもこのRayのキットから始めた人もいる。また、ある程度縫物の知識がある人は、国内のOutdoor Material Martで素材を手に入れても良いだろう。MYOGは縫物に限ったわけではなく、家にある空き缶でストーブを作ってみたり自分が作りたいと思うものなら何でも良い。また、今ある既存のアイテムに何かアレンジを加えたり、逆に何か外したりするだけでも良い。会場にGoLiteのiONにゴムをつけたメッシュの袋をすっぽりと履かせてメッシュポケットを加えた人がいたが、とても感心したアレンジだった。そういうアプローチはアリだと思う。


MYOG
(イベントの最後に発表されたMYOGギアが並べられ、参加者が採点をおこなった)


「次回開催へ向けて」


ミシン何を買ったらいいでしょうか?また、斬新なもにではないけれど、こんなものを作って、こんな旅をしました。など、そんな話ができる場(MYOG JAPAN)がfacebookに用意されているので、興味がある方は参加ボタンを押して欲しい。おそらく今回目立ったbloggerのMYOGアイテムはほぼ全弾撃ち切ったと思われるので、新しいMYOGerとアイテムの登場をみんなが待ち望んでいる。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2012年2月 | トップページ | 2012年4月 »