信越五岳トレイルランニングレース110km (2)
(1)から続き…
関川をほぼ走り切り、
「ここで終わってもいい」
というのは奢った考えであった。関川走破で脚を使い果たしてしまったので本当に終わってしまいそうな状態であった。もう登りの脚は完全に終わっていた。その後の4Aまでのトレイルは平地が多く気持ち良く走れる平坦なトレイルの区間だが、ほとんど歩き通してしまった。これでは前々回の怪我をした時とほぼ同じ展開ではないか。成長があったようで、無かったような複雑な気持ちのままあの土管をくぐり51.5km地点4Aに到着。
これでもまだ110kmの半分に達していない。4Aで家族を探すが見当たらず。電話してみると妙高のホテルにいた。まだ着かないと思っていて休んでいたらしい。応援が初めてだから、こういう事はあるのは想定内だったので、ジェルは多めに背負っていたし、4Aの笹寿司をいただいたので食料は全く問題無かった。家族もいないので、トイレをすませ、歩きながら食べ物を食べつつ5Aに向かった。
黒姫の長い長いだらだらと続く林道を上りはじめた。ここも苦手なポイントだ。速い人はここも走っていってしまうのだろうが、自分は既に登りの脚は完売なので歩き通していいると、後からどんどん抜かれた。しかし、下りはまだ脚は残っていて、登りで抜かれた人を下りで抜き返すという攻防で水力発電のパイプの急坂に到達。走れそうで走れない傾斜より、絶対に走れないと思える角度の急坂の方が幾分楽に感じるのは何故だろうか?
パイプ横を登り切るとクロスカントリーコースに出る。ここからは走ろうと思っていたが、ちょっとした上り傾斜があるとすぐに歩きたくなってしまう。その時、背後から応援で待機していたISOさんに大きな声援をもらい、走りに弾みがついた。応援は本当にありがたい。そして開けた牧草地帯と背後の妙高山の組み合わせが本当に美しかった。
66km地点の5Aに到着。ようやく半分を越えた。今度は家族がスタンバイしていた。脚が本当に終わっていて、父と母に思わず脚のマッサージをしてもらった。本来なら逆にしてあげるべき立場なのだが…。4Aでたっぷりと休みをとっていると、jirowさんが顔色悪く立っていた。低体温症になってしまい、少し休んでいるとのことだった。たしかにこの日は風が冷たかったが、自分は暑がりなので逆にこの寒さは有利に働いていたと思う。細い人には寒さはこたえたかもしれない。
補給を済ませ、6Aに向けて出発。ダムの階段をのぼり、トレイルにはいったが、まだ走れる状態になっていなかった。途中、同じくらいのペースの選手と話しながら進むことができ、その彼も自分と同じく前日まで仕事でほとんど寝ずにスタートしたという話を聞いたことで、自分だけでは無いと思うと徐々に力が湧いてきてさらにペースは復活してきた。
足場が悪くグチャグチャの黒姫上りではあったが、走りと歩きを混ぜた良い感じのペースで黒姫を上り切れた。このペースなら鏡池に明るいうちに行けるかも?という期待感があったが、日は間もなく落ち、ヘッドライトが無いと進めない状態となると、木の根が複雑に絡んだトレイルは滑りやすく、この黒姫の下りでは思ったほどペースは上げられず、鏡池の景色を見る事は叶わなくなってしまった。ここで復活したjirowさんが猛烈に追い上げてきて合流。しばらく並走していた。
鏡池の景色は拝めなかったが、日没ギリギリ手前の古池に降り立つと、池はアメンボの波紋すらなく鏡のような状態になっていて、逆光の陰になった木々と少し雲った空とが映りこみ、上下を鏡に挟まれて空中を走っているような不思議な感覚になった。この霧でかすんだ完全にモノトーンのグラデーションで構成された景色はまさに東山魁夷の風景画そのものだった。長野を愛し長野に美術館がある程の東山魁夷は本当にこんな景色を見て描いたのだなと合点がいった瞬間だった。鏡池とは違った、古池である瞬間にしか見られない幻想的な景色が見られ得した気分になった。
その後、日は完全に落ちてしばらく走って81km地点の6Aに到着。
(3)続く…
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